メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
「嘘だよね。私のせいでお店がこんな状態だから……」
「嘘じゃない。だけど気分転換が必要だと思ったのも確かだね」
 乃蒼の気遣いに胸がしめつけられた。

 翌日の昼休憩、陽音は彼の目を盗んで店の外に出て、グルメーズに電話をかける。
 もどかしい呼び出し音のあと、この電話はサービス向上のため……というお決まりの案内が流れた。

 編集部につながると須藤淳太の名を告げ、替わってもらう。
「陽音です」
 名乗った直後、電話の向こうで息を飲むのがわかった。

「ちょっと待て、連絡先を教えろ」
「そんな必要ないです」
 震える声で、なんとかそう告げる。

「嫌がらせをやめてください。悪い口コミ、あれは捏造ですよね」
「正当な評価だろ。ってか、人様の口コミに反論できるほど偉いのか、お前は」
 威圧する声に陽音は震える。

「せめて、良い口コミを消すのをやめてください」
「悪意ある口コミなら消すけどなあ」
「だったら今の口コミ全部じゃないの!」
 思わず叫んでいた。

「生意気だなあ。だけど、お前が離婚するっていうなら対処してやるよ」
「そんな……」
「別れたら電話くれよな」
 嘲笑と共に電話が切れ、陽音は呆然と店を見る。

 乃蒼と一緒に何件も不動産をまわって、あれでもないこれでもないと言い合い、立地がよくて状態のよい中古物件を手に入れた。
 役所で事業者向けの助成金の説明を一緒に聞いたり、銀行に行ったり。
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