メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
「こっちはうまい。やっぱりさっきまでなにかしてただろ」
「いい加減にしてください。それほどお疑いなら、次からは大皿でお出しします」
 続いてのサーモンのミニパイでは、宣言通りに大皿で出した。が、淳太がひとりで確保してしまい、みんなを唖然とさせていた。

「おかしい、どれもうまい……」
 すべてをもぐもぐと食べてから、淳太ははっと周りを見る。白い目が集中していて、いたたまれないようにうつむく。
「お気に召していただけたようですから、打ち上げでもお出ししますね」
 陽音は淳太に軽蔑のまなざしを送り、参加者に伝えた。

 プチハンバーガー、クリームコロッケなど、料理が続く。
 淳太は「味が薄い」「濃すぎる」などと無理矢理に文句を言い、ドン引きされていた。

 ローストビーフは乃蒼が彼らの目の前で切り分け、陽音がグレイビーソースをかけた。
 客たちが喜んで食べる中、淳太が叫ぶ。
「中が赤い、火が通ってないぞ!」
「これ、ローストビーフだよ?」
 女性がひきつった顔でつっこむ。ローストビーフの中心がピンクがかった赤色なのはロゼと呼ばれる状態で、内側に火が通っているが、水分が保持されて肉のうまみが感じられる状態だ。生の場合はもっと赤い上、生臭くなる。

「まだありますので、ご自由に切ってお楽しみください」
 ローストビーフとナイフをテーブルに残し、陽音は乃蒼とともに厨房に戻った。
 みんなローストビーフに夢中でこちらを見ていない。

 緊張と共に乃蒼を見て、頷き合う。
 陽音は卵を割って塩コショウを振ってかきまぜ、熱したフライパンに流し込んだ。半分くらい火が通ったところで炒めておいたベーコンととろけるチーズを振り入れる。それから半分に折って少し火を通し、適当オムレツの完成だ。
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