メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
 お母さんがよく適当オムレツを作ってくれたな。
 思い出したら食べたくなってしまい、作ることにして先に添え物の準備を始めた。
 冷凍されたブロッコリーを解凍してレンジにかける。ジャガイモは皮をむいてひと口サイズに切り、これもレンジにかけた。

 続いては適当オムレツだ。
 ベーコンを適当な大きさに切り、フライパンで炒めた。
 いったん引き上げてから卵を溶いて塩コショウを入れてフライパンに流し、半ば火が通ったところでベーコンを入れ、とろけるチーズを適量入れる。
 それを真っ二つに折り畳み、ちょっと火を通したら出来上がり。
 きちんとしたオムレツの形には整えない。半熟にはせず火加減も適当。だから適当オムレツ。ぎざぎざにケチャップをかけたら完成だ。

 ジャガイモにバターを載せて塩をふり、ブロッコリーには塩コショウとオリーブオイル。
 焚いてあったごはんをよそい、自分用にストックしてあるインスタントのスープを添える。

 ノートパソコンを脇によけて、ノンアルコールビールとともにトレイに載せたごはんをテーブルに置いた。
 いただきますと手を合わせてからビールを飲み、適当オムレツを食べる。
 ケチャップの甘みと酸味、卵とチーズの濃厚な味がからみあっておいしい。

 思ってから、急に不安になる。
 これ、本当においしいの?
 乃蒼の料理なら自信をもっておいしいと言える。だが、自分の料理がおいしいわけがない。淳太にあれほどけなされたのだから。

「ただいま」
 ダイニングの扉が開いて乃蒼が現れた。ブルーのシャツに紺色のボトムが、白衣姿を見慣れた目には新鮮だ。
「乃蒼? どうして?」
 陽音は思わず箸を置いて時計を見た。まだ七時。予定より早いし、玄関の開く音には気付かなかった。
< 7 / 51 >

この作品をシェア

pagetop