帝の唯一の女〜巫女は更衣となり、愛に囚われる〜
「……考えさせてください。」一先ずそう答えた。

けれど、考えれば考えるほど胸が締めつけられる。

——あの方が、他の女人と情を交わす。

その想像だけで、胸が張り裂けそうになった。

「うっ……」気づけば涙が頬を伝っていた。

「どうした?」

いつの間にか、暁宮様がすぐ傍に立っておられた。

その声に驚き、慌てて袖で涙を拭う。

「成人の儀で……宮様は神事に向かわれるとか。」

「ああ。」

淡々とした返事。どこまで聞かれているのか分からない。

「その相手に……私が選ばれたのです。」

一瞬、時が止まったようだった。

「えっ——」

暁宮様の頬がみるみる朱に染まり、視線が泳ぐ。

やがて真剣な眼差しで、私の手を取られた。

胸がどくん、と跳ねる。

「巫女だとは聞いていたけれど……」

暁宮様は、ちらりと私を見た。その眼差しがあまりに優しく、胸の奥が熱くなる。

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