帝の唯一の女〜巫女は更衣となり、愛に囚われる〜
そして私は、村から離れた大きな神社に、巫女として勤めることになった。

と言ってもやることは村と変わらない。

痛みや傷、熱に苦しむ人々に、そっと手を当てる。

それだけで症状が和らぐのだと、人々は口々に言った。

「おお! さすが神の御使い」

そう褒められるたびに、少しくすぐったい気持ちになった。

境内には四季折々の花が咲き、朝は鈴の音とともに祈りが始まる。

日暮れには拝殿の灯明が柔らかく揺れ、私はその光に包まれて眠りにつく。

人の役に立っている──そう実感できる毎日だった。

安らかで、変わらない日々。

けれど、この静かな暮らしの先に、私の運命を変える出会いが待っていることを、まだ知らなかった。

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