婚約破棄された上に魔力が強すぎるからと封印された令嬢は魔界の王とお茶を飲む
「まっ、ま、魔王だと……?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ない、ディネアック・ルシタジュフ殿下。我は魔界の王、ウィズヴァルドと申す」
ラティエシアの隣で、魔王が華麗な身のこなしで頭を下げた。
途端に王子の目があからさまに泳ぎ出す。
「た、ただの魔族ではなく魔王、で、あらせられる、のか……?」
気づかなかったのは無理もない。なにせ250年以上前に不可侵条約が結ばれて以降、誰も魔王の姿を見たことがないのだから。
だからといって、魔王を『大罪人』と糾弾し、封印するなどしていいはずがない。王子は人間界の王族として、魔界の君主にどれだけ非礼なことをしたかを今さら自覚したようだった。
黙り込んだ王子に向かって、ラティエシアは心ひそかに抱いていた決意を口にした。
「貴方が私を封印したがっているのは、私をここから排除したいからでしょう? でしたら……私はこの国を出ていきます!」
高らかに宣言した途端、王子が元の小馬鹿にした表情に戻った。
「なにを抜かすか。ただ魔力が強いだけの貴様が国を出ていくなんて、そんな大それたことできるわけないだろう」
そう、私はただ魔力が強いだけだけど……。
ウィズヴァルド様が褒めてくださった。私の魔力の波動は心地よいとまでおっしゃってくださった。王子に否定されても自信は揺るがない。
隣に立つ魔王に向き直り、金色の瞳をまっすぐに見上げる。
魔力を抑えられない以上に、膨れ上がる願いはもう抑え切れない。身体の周りに鮮やかな赤いオーラが炎のように揺らめき出した。
「魔王ウィズヴァルド様。どうか私を、魔界に連れて行ってくださいませんか」
尋ねた途端、ざわっ、と広間が驚きの声に包まれた。
魔王は無表情で黙り込んだままだった。睨むかのような鋭い眼光。
こんなこと言われても迷惑かも知れない。
それでも私は、貴方と共に在りたい。
願いをそのまま口にしようとしたその瞬間。
魔王がフロックコートの裾を払い、ラティエシアの前にひざまずいた。
胸に手を置き、もう一方の手を差し出してくる。
「ラティエシア・マクリルア伯爵令嬢。我は元より、そなたを魔界に連れ帰るつもりでいた。そなたの口から『魔界へ行きたい』と言ってもらえて安堵している」
ラティエシアを見上げる瞳が柔らかな笑みを浮かべる。
「そなたがそなたらしく生きられることこそ、我の望みなのだ。我と共に、魔界で暮らしてもらえるだろうか」
その瞬間、周りで見ている令嬢たちが一斉に「キャーッ!」と叫んだ。
ラティエシアこそ叫びたい気持ちでいっぱいだった。
私、もしかして今ウィズヴァルド様にプロポーズされたの!? 魔界の王様に!?
「ご挨拶が遅れて申し訳ない、ディネアック・ルシタジュフ殿下。我は魔界の王、ウィズヴァルドと申す」
ラティエシアの隣で、魔王が華麗な身のこなしで頭を下げた。
途端に王子の目があからさまに泳ぎ出す。
「た、ただの魔族ではなく魔王、で、あらせられる、のか……?」
気づかなかったのは無理もない。なにせ250年以上前に不可侵条約が結ばれて以降、誰も魔王の姿を見たことがないのだから。
だからといって、魔王を『大罪人』と糾弾し、封印するなどしていいはずがない。王子は人間界の王族として、魔界の君主にどれだけ非礼なことをしたかを今さら自覚したようだった。
黙り込んだ王子に向かって、ラティエシアは心ひそかに抱いていた決意を口にした。
「貴方が私を封印したがっているのは、私をここから排除したいからでしょう? でしたら……私はこの国を出ていきます!」
高らかに宣言した途端、王子が元の小馬鹿にした表情に戻った。
「なにを抜かすか。ただ魔力が強いだけの貴様が国を出ていくなんて、そんな大それたことできるわけないだろう」
そう、私はただ魔力が強いだけだけど……。
ウィズヴァルド様が褒めてくださった。私の魔力の波動は心地よいとまでおっしゃってくださった。王子に否定されても自信は揺るがない。
隣に立つ魔王に向き直り、金色の瞳をまっすぐに見上げる。
魔力を抑えられない以上に、膨れ上がる願いはもう抑え切れない。身体の周りに鮮やかな赤いオーラが炎のように揺らめき出した。
「魔王ウィズヴァルド様。どうか私を、魔界に連れて行ってくださいませんか」
尋ねた途端、ざわっ、と広間が驚きの声に包まれた。
魔王は無表情で黙り込んだままだった。睨むかのような鋭い眼光。
こんなこと言われても迷惑かも知れない。
それでも私は、貴方と共に在りたい。
願いをそのまま口にしようとしたその瞬間。
魔王がフロックコートの裾を払い、ラティエシアの前にひざまずいた。
胸に手を置き、もう一方の手を差し出してくる。
「ラティエシア・マクリルア伯爵令嬢。我は元より、そなたを魔界に連れ帰るつもりでいた。そなたの口から『魔界へ行きたい』と言ってもらえて安堵している」
ラティエシアを見上げる瞳が柔らかな笑みを浮かべる。
「そなたがそなたらしく生きられることこそ、我の望みなのだ。我と共に、魔界で暮らしてもらえるだろうか」
その瞬間、周りで見ている令嬢たちが一斉に「キャーッ!」と叫んだ。
ラティエシアこそ叫びたい気持ちでいっぱいだった。
私、もしかして今ウィズヴァルド様にプロポーズされたの!? 魔界の王様に!?