婚約破棄された上に魔力が強すぎるからと封印された令嬢は魔界の王とお茶を飲む
淡いピンク色のオーラがシャボン玉のようにポンポンと身体から噴き出す。
こんな形のオーラを見るのは初めてだった。
夢見心地でふわふわとしたまま、差し出された手におずおずと手を乗せる。すると魔王が目を伏せ、手の甲にキスした。
見守る令嬢たちの悲鳴がますます大きくなる。
魔王が颯爽と立ち上がる。ラティエシアの手を引き、顔を近付けてくる。
まさかキスされるの!? 人前で!?
ラティエシアがどきどきしながら目をぎゅっと閉じると、魔王が頬を寄せてきて、耳元で囁いた。
「……すまないラティエシア嬢。喜びに浸っていたいところだが、そろそろ去った方がよさそうだ。国王の動きを感知した。こちらへ向かっている」
「えっ……」
「今、国王と対面するのは面倒だからな。いずれ正式な挨拶をしに戻って参ろうではないか」
「はい!」
目を見合わせてうなずき合い、再び王子を見る。
ここから立ち去る前に、この場の代表者に挨拶をしておかないと。
口を開き掛けた矢先、魔王が耳打ちをしてきた。と同時に手を握ってきて、魔力の流し方を教えてくれる。
それは、とある魔法の出し方だった。
人間界には存在しない恐ろしい魔法が魔界にはあるらしい――。ラティエシアは弾かれたように振り向くと、驚きを口にした。
「そのような魔法があるのですか!?」
「ああ。楽しかろう? できそうか?」
「はい、やってみます!」
目を伏せて、腹の前で手のひらを上にして構える。
手の中に軽く魔力を溜めて、親指で弾いて正面に飛ばす。
王子とその恋人にこっそりぶつけた魔法はすぐに効果が現れた。
「『なんで牢から出てきちゃったのよあの女! やっと全部うまくいったと思ったのに! 王妃になって贅沢ざんまいする予定が』……ぎゃっ!?」
踏みつけられたような悲鳴を上げたモシェニネが、慌てて両手で口を押さえる。ラティエシアが放ったのは、狙った相手の心の声を引き出す魔法だった。
また魔王が顔を近付けてきて、小声で話しかけてくる。
「(上手だ、ラティエシア嬢)」
「(ありがとうございます、ウィズヴァルド様)」
小声で言葉を交わして微笑みあう。
ラティエシアたちがほんわかとする一方で、赤面したモシェニネが金切り声で叫んだ。
「なに今の!? あんた一体私になにしたの!?」
こんな形のオーラを見るのは初めてだった。
夢見心地でふわふわとしたまま、差し出された手におずおずと手を乗せる。すると魔王が目を伏せ、手の甲にキスした。
見守る令嬢たちの悲鳴がますます大きくなる。
魔王が颯爽と立ち上がる。ラティエシアの手を引き、顔を近付けてくる。
まさかキスされるの!? 人前で!?
ラティエシアがどきどきしながら目をぎゅっと閉じると、魔王が頬を寄せてきて、耳元で囁いた。
「……すまないラティエシア嬢。喜びに浸っていたいところだが、そろそろ去った方がよさそうだ。国王の動きを感知した。こちらへ向かっている」
「えっ……」
「今、国王と対面するのは面倒だからな。いずれ正式な挨拶をしに戻って参ろうではないか」
「はい!」
目を見合わせてうなずき合い、再び王子を見る。
ここから立ち去る前に、この場の代表者に挨拶をしておかないと。
口を開き掛けた矢先、魔王が耳打ちをしてきた。と同時に手を握ってきて、魔力の流し方を教えてくれる。
それは、とある魔法の出し方だった。
人間界には存在しない恐ろしい魔法が魔界にはあるらしい――。ラティエシアは弾かれたように振り向くと、驚きを口にした。
「そのような魔法があるのですか!?」
「ああ。楽しかろう? できそうか?」
「はい、やってみます!」
目を伏せて、腹の前で手のひらを上にして構える。
手の中に軽く魔力を溜めて、親指で弾いて正面に飛ばす。
王子とその恋人にこっそりぶつけた魔法はすぐに効果が現れた。
「『なんで牢から出てきちゃったのよあの女! やっと全部うまくいったと思ったのに! 王妃になって贅沢ざんまいする予定が』……ぎゃっ!?」
踏みつけられたような悲鳴を上げたモシェニネが、慌てて両手で口を押さえる。ラティエシアが放ったのは、狙った相手の心の声を引き出す魔法だった。
また魔王が顔を近付けてきて、小声で話しかけてくる。
「(上手だ、ラティエシア嬢)」
「(ありがとうございます、ウィズヴァルド様)」
小声で言葉を交わして微笑みあう。
ラティエシアたちがほんわかとする一方で、赤面したモシェニネが金切り声で叫んだ。
「なに今の!? あんた一体私になにしたの!?」