婚約破棄された上に魔力が強すぎるからと封印された令嬢は魔界の王とお茶を飲む
(封印刑ですって!? なぜ私が!?)

 予想外の宣言にラティエシアが目を見開いた瞬間。
 ざわめく人々の間から王宮魔導師が踊り出てきた。
 幾人もの魔導師が、ラティエシアを中心に輪を描いて詠唱を始める。

 封印刑なんて、国王陛下がお許しになるはずがないのに――!
 これまで一度も王子に異を唱えたことのなかったラティエシアは初めて婚約者を問いただした。

「ディネアック殿下、なぜ私がそんなにも重い処罰を受けなければならないのですか!?」
「モシェニネをいじめただろう」
「そんなこと、誓ってしていません!」
「言い逃れする気か、ますます許しがたい! ただちに封印牢へと封印せよ!」
「――はっ!」

 魔導師たちの揃った声を聞きながらラティエシアはうつむいた。
 ――ああ、この人には何も言っても無駄なんだった。 
 いつからだろう、『婚約者として王子を支えていこう』という気持ちがなくなったのは。忘れるくらい昔から、ラティエシアは王子から相手にされていなかった。
 失望する間にも、四方から放たれた魔法の光線がラティエシアを貫く。
 本気を出せば弾き返せる魔法でも、防御魔法を展開する気力は失せていた。

(どうして私がこんな目に遭わなければいけないの?)

 泣き出しそうになる。それでもぐっと奥歯をかみしめて、反射的に心の揺れを抑えてしまう。人々が不快だ(・・・)という魔力が洩れ出ないようにするために。心を読まれてしまわないように。

(こうして涙を我慢できるようになったことも、全部無駄だったのね……)

 胸の内でつぶやいた瞬間、ラティエシアは気を失った。
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