諦めていた恋の続きを始めます
何度も追い返したが、とうとう沙織はとんでもないことを言いだした。
「私、子どもが欲しいの」
実家の父は失脚し、立場を失った。
このままでは真大に離縁されるかもしれないと、危機感を抱いたようだ。
後継ぎになる子どもが出来たら、自分の立場を守れると思い込んでいる。
「あなたと真大さんは同じ血液型。あなたの子なら誤魔化せる」
「は?」
最初は意味がわからなかった。つまり悠真の子を妊娠して、夫を騙そうとしている。
平然と不義を持ちかけてくる沙織は、追い詰められて平常心を失っていた。
「抱いて。お願い。周防家の血を引く子どもが欲しいの」
「バカなことを」
「今の私には子どもが必要なのよ」
ありえない話に、悠真は沙織を見限った。
「二度と顔を見せるな」
あらぬ疑いをかけられる前に、悠真は家族と距離を取ることにした。
学会で知り合った循環器の医師から誘われていた、四国の病院へ行くことを決めた。
医師不足が深刻な地域だから、少しは役に立てるだろう。
(これでいい)
誰にも沙織のことは話していない。悠真はこれ以上、家族の関係を拗らせたくなかった。
自分が去ることで、真大のためにも沙織が冷静になってくれることを願うだけだった。