諦めていた恋の続きを始めます
「私、寂しいの」
愚痴の最後には、夫婦関係が思うように持てないことを口にした。
真大が忙し過ぎて、夜の生活どころか昼間もすれ違いの毎日だという。
「俺には関係のないことだ」
冷たく言っても、沙織は納得しない。
「お義母様に、子どもはまだかって言われるのが耐えられない」
沙織が何を思ったか、急に抱きついてきた。
「よせ」
「お願い、慰めて」
あろうことか、体の関係を求めてくる。
真大は心臓外科医だ。しかも、手術を数多くこなしているから多忙なはずだ。
妻として夫をサポートすべきなのに、よりによって悠真を代用品にしようというのか。
兄のスペアとして育てられたが、夫の代理までさせられる気はない。
「さっさと帰れ」
すぐに沙織をマンションから追い出した。
同じころ、沙織の父親の醜聞が週刊誌にスクープされた。
業者や医師会から高額な接待を受けていたようで、国家公務員倫理規定に違反するとして更迭処分が決まった。
それからの沙織は、さらに情緒不安定になっていった。
次に悠真の前に姿を見せたときには、かなりやつれた顔をしていた。
「お願い、助けて」
沙織は実家のせいで、周防家でも居場所がなくなったと泣きついてくる。
「俺にはどうしようもない。真大を頼れ」
「だって、話す時間もないのよ」
どんなに頼まれても、兄夫婦の問題に介入する気はなかった。