諦めていた恋の続きを始めます


(焦ってはいけない)

あの夜のように急ぎ過ぎては、まどかの気持ちは動かせない。
二度と誰にも渡す気はないのだから、時間をかけよう。悠真はそう覚悟を決めた。

だからまどかの警戒を解くために、たびたび島に足を運んだ。

島のゆっくりした時間の流れにまかせ、ふたりだけでのんびりと過ごす。
時には島の外に出かけたりして、少しずつ悠真の存在を受け入れてもらおうとした。

次第にまどかの表情が柔らかくなり、悠真に対しても自然に微笑んでくれるようになってきた。
やっと以前のまどかが戻ってきた気がして、ホッとした。

まどかが働いている島の診療所の穴吹医師とも、患者の診断を通じて交流を深めた。
穴吹医師はひとりで奮闘していたが、高齢のため診療所を閉じることになっているという。

診療所を受け継いでくれる医師を募集していると聞き、カンファレンスのあとで同僚たちに話を振ってみた。

「我々の大先輩ですからお役に立ちたいのですが、島で暮らすのはチョッと」

診療所の引き受け手が見つからなければ医師のいない島になってしまうのだが、開業したい気持ちはあってもいざとなると尻込みするようだ。
悠真自身もいつまでここにいるか決めていないから、簡単な気持ちでは引き受けられない。




< 102 / 173 >

この作品をシェア

pagetop