諦めていた恋の続きを始めます
「俺と一緒に、東京に帰ってくれないか」
「え」
カップを口に運ぼうとしたまどかの手が、ピタリと止まる。
「あの、どういう意味でしょうか」
「俺と一緒」とは、ふたりでということだ。悠真が東京の家に帰る話ではと、思わず聞き返す。
「思ったより、兄の病状はよくない。だから俺は東京に帰ろうと思う」
こちらに来て年末でちょうど一年だから、契約的にもタイミングがよかったと言う。
「そ、そうですね。その方がいいと思います」
いつかは東京に戻る人だと覚悟していたはずなのに、いざとなると少しうろたえてしまった。
「君にも周防家に来てほしい」
悠真の声は冷静なままだが、話す内容はピンとこない。
「あの、私が、どうして周防さんの家に?」
「何でもするって言ってくれただろう?」
「え、ええ」
悠真は、兄のことを話し始めた。
「真大は、周防総合病院を継ぐために生まれてきたような人間だ」
「はい」
琉輝からも、悠真の兄はアメリカの病院で認められるくらい優秀な心臓外科医だと聞いたことがあった。
「とても優秀なお医者様だそうですね」
悠真もそうだというように、うなずいている。
「ただし、よりによって沙織と政略結婚した。相手はいくらでも選べただろうに」
島にまで訪ねてきた沙織という女性は、悠真の恋人だったはずだ。
だがとても冷たい、まるで嫌っているような言い方だ。
自分を選ばずに、兄と結婚したことに怒っているのだろうか。
それとも、兄こそ他の女性と結婚すればよかったという意味だろうか。
悠真が何を言いたいのか、まどかにはわからなくなってきた。