諦めていた恋の続きを始めます



やがて秋も深まった。

長年お世話になったお礼を言おうと、診療所にはいつもよりも多く患者が訪れるようになった。
まどかも大忙しの毎日だ。
診療所には電子カルテが導入され、年が明けたら医師がやってくる手はずも整った。

悠真も忙しいのか、連絡はないし島に来る時間もないようだ。
東京に帰ると決めたから、引継ぎなどあれこれあるのだろう。

穴吹夫妻には、まどかも東京へ帰ると伝えた。悠真とは正式に結婚の約束をしたことにしている。
婚約者のフリだなんてどう説明すればいいかわからないし、誤解を招きたくなかったからだ。

仕事をしていれば偽装婚約のことを思い出すことはなかったが、日に日に胸の奥にある重いものが存在感を増してきた。

その重さがなにかは、わかっている。

「まどかちゃんが東京に帰るのは寂しいけど、いいお話だものね」

晴美に優しく声をかけられると、自分が大うそつきになった気がする。

胸の重みはうその塊だ。

心の底でまどかは、婚約したフリなんてしたくないと叫んでいるからだ。

本物の婚約者になりたい。そう言いたいのに言えない自分が情けなかった。

(でも、これで悠真さんの役に立てるなら)

まどかは自分の本心を隠し通すと決めたのだ。




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