諦めていた恋の続きを始めます
まどかは気軽に遊べるような関係を望んでいたわけではない。
周防は優秀な医師で、目を引くようなルックスの持ち主だ。
東京都内でも有名な周防総合病院の息子という、恵まれた環境に生まれた人でもある。
もともと、まどかなど手の届かない人だった。
わかっていたのに、偶然がきっかけとはいえ温もりを求めてしまった。
あの日、同じベッドにいた人。
眠っていても、見とれるくらい美しい人。
だから、怖くなってしまった。
自分なんかがそばにいていいはずがない。
悪いのは、婚約者に裏切られた心の傷を引きずっていたまどか自身だ。
周防なら、どんな女性とだって付き合えるだろう。
なりゆきで一夜をともにするなんて、周防にとって大したことではないのかもしれない。
たとえ軽い火遊びだったとしても、責めることはできない。
あの夜、誘ったのはまどかだったのだ。
たった一夜とはいえ、自分の軽率さが恥ずかしくてたまらない。
そっとホテルの部屋を出たあの日。
何も言わずに去ってしまってごめんなさいと、心の中で何度つぶやいたことか。
怒っているだろうか。それとも、もう忘れてしまっただろうか。
うっかり関係を持ってしまった親友の妹が黙って去ってくれて、ホッとしていただろうか。
まどかは心の奥に一夜の記憶を押し込んで、二度と表に出てこないようきっちりと鍵をかけた。
もう会うことはない人だと思っていた。そのはずだった。