諦めていた恋の続きを始めます
「えっ」
「だから、あなたに真大の看護をお願いしたいの」
「でも、私は」
「看護師の資格もお持ちだし、あなたになら真大を任せられるわ」
栄子はいい考えだと言わんばかりで、夫に視線を向けた。
「ね、あなたもそう思うでしょ」
「ああ」
適当にうなずいているようにも見えたが、その返事ですべてが決まったようなものだ。
どうやら栄子が真大の退院を嫌がるそぶりを見せた狙いは、まどかに看護をさせることだったようだ。
うっかり口を出してしまったことを後悔したが、もう遅い。
「いや、まどかにさせるつもりはない」
「あら、真大の調子がよくなるまでのほんの短い間じゃない。ふたりの時間を邪魔するほどのことじゃないでしょ」
「そんなことを言ってない」
悠真は拒否しようとしてくれているが、栄子の中では決まったことなっている。
「それに看護してくれるなら、まどかさんもここに住めばいいし」
「「え?」」
思わず悠真と声がかぶってしまった。
「あら、悠真はマンションにいるんだから問題ないでしょう」
栄子は平然としている。
「ね、しばらくここに住んでもらいましょうよ。その方がいいわ」
「母さん、勝手に話を進めないでくれ」
「お会いしたこともないのに、いきなり私がお世話するなんてお嫌でしょうし」
まどかも言葉を選んで断ってみたが、栄子は聞く耳を持たない。
「大石家の皆様にもご理解いただかなくちゃ」
自分が大石家に連絡するとまで言いだした。
「あの、でも」
まどかは困った。
沙織の暴走をおさえ、悠真の縁談を断るための偽装婚約だった。
ただでさえ大石家の家族にうそをついているのに、看護が必要な短い期間といえ周防家に住むなんて予想外の展開だ。