諦めていた恋の続きを始めます
廊下に出たとたん、まどかはホッと小さなため息をついてしまった。
「すまない」
どうやら悠真にも聞こえたらしい。
「お母様は、お兄さんに元気になって欲しいんです。気にしないでください」
そう答えたが、まどかには栄子の本心がわからない。
沙織という医師の妻がいるのに、まどかに看護のすべて任せるつもりなのだろうか。
「それに悠真さんが謝らなくても」
口には出せないが、謝られるより「ありがとう」と言って欲しかった。
「母親なのに自分は何もしたくないんだ。まどかに看護をさせようだなんて、あきれただろう」
「でも私は看護師ですから」
まどかは微笑んだ。
「頼りにされているなら、それに応えるだけです」
「これ以上君に無理をさせたくなかったんだが、申し訳ない」
「謝ってばかりですよ」
「ああ、そうだった。もう言わない」
お互いになんだかおかしくなって、クスクス笑いながら玄関ホールまで歩いた。
ふいに悠真が立ち止まった。
「まどか」
「はい」
まどかが見上げたら、じっと瞳を見つめてくる。
「話しておきたいことがある」
なんだろうと思っていたら、ふいに玄関のドアが開いた。
「ああ、寒かった」
外の冷たい空気と一緒に、華やかな色が飛び込んできた。沙織が帰宅したようだ。
「あら、あなた」
沙織は無遠慮にまどかに声をかけてきた。
「確か、島でお会いしたわね」