諦めていた恋の続きを始めます



驚いたことに、夜になって悠真が「ただいま」と言って周防家に戻ってきた。

「お帰りなさい?」

大学時代からマンションに住んでいたはずだ。
何か用でもあったのだろうかと思っていたら「俺も今日からここに住む」と、けろりとした顔で言う。

マンションは相続でもらった中古だから、売って新しい物件を探すことにしたそうだ。
話してくれたらよかったのにと言えば、住むところが決まるまで毎日まどかに会えるなとうそぶいている。

「まどかをこんな家にひとりでいさせない」

「え」

「俺がいたほうが、なにかと便利だろ?」

そんな言い方をするところが悠真らしい。
まどかのことを心配して、嫌いなはずの家に帰ってきてくれたのだ。

(優しいのを、わざと隠している)

悠真は自分の優秀さとか思いやりのあるところを、あえて見せないようにしている。
それは幼い頃から兄と比較され続けてきた悠真なりの、自分を守るために身につけた処世術だ。

まどかを気にかけてくれている気持ちが、じんわりと伝わってきた。

「ありがとうございます」








< 138 / 173 >

この作品をシェア

pagetop