諦めていた恋の続きを始めます





沙織が真大の部屋に顔を見せたのは、その日の夜だった。

「具合はいかが?」

「ああ。大丈夫だよ」

まどかがバイタルサインを計って記録していたところだった。
ふたりだけの方がいいかと思い、まどかは席を外した。

だがふたりが過ごしたのは、ほんの数分だったようだ。
三十分くらいして様子を見に戻ったが、もう沙織はいなかった。

真大が言うには、沙織は化粧品の仕事を始めてから忙しいらしい。
その日以降は、まどかが知る限り姿を見せなかった。

夫婦がどんな方法で連絡を取っているのかまではわからない。
沙織は看護しているまどかが気に入らないもかもしれないが、真大は妻と会わなくてもいいのだろうか。

そういえば悠真とも、周防家に来た最初の日以来は会えないでいた。

どうやら早朝から深夜まで、周防総合病院で過ごしているらしい。
以前に、早めに職員の顔と名前を覚えたいし、医療機器の使用状況や経営状態など、院内のあれこれを把握したいと話していた。

悠真のことだから診察の傍らカテーテル一本の値段から使用回数まで、きっちりと計算しているのだろう。
短期間で調べるには膨大な量だから、無理をしているのではないかと心配だった。




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