諦めていた恋の続きを始めます
***
周防家で看護を始めて、十日が過ぎた。
真大はとても看護しやすい患者だった。
まどかや家政婦に対して丁寧な物腰だし、急かしたり命令口調になることもない。
ただ相変わらず、ぼんやりとした表情だった。
この病気では、手術して退院したあと早ければ社会復帰まで三週間くらいだ。
だが真大からは、早く回復したいという気持ちは感じられなかった。
外科医という職業柄もあって慎重になっているのかもしれないが、ベッドに横たわってる時間が長いし、リハビリにも熱意が見られない。
本やテレビを見るでもないし、食事の好みひとつ家政婦に伝えることがない。
落ち着いているようにも見えるが、これがいつも通りの真大なのかまどかには判断できなかった。
もともとそういうタイプだったのか、病気になってから何もする気がわかないのだろうか。
医師に復帰することや家族のことなど、すべてに対しての感情が抜け落ちている。
(諦めているようにも見える)
ふと思い当たる症状が頭に浮かんでくる。
それを悠真に話していいものなのか、看護師の見立てで判断していいものなのか迷いはあった。
(家族の問題かもしれないけど、今後の回復に影響するかもしれないし)
早く元気になりたいという気持ちは、回復への大きな力になる。
医師とアセスメントを共有するのは大切なことだ。今は看護師として行動すべきだと、まどかは考えた。