諦めていた恋の続きを始めます
まどかの部屋は玄関に近いから、悠真が帰宅してきたらすぐにわかる。
自室で待っていて、ドアが開く気配を感じてから廊下に出た。
「お疲れ様でした」
静かに声をかけたら、悠真はとても驚いた。
「こんな時間まで、起きていたのか」
「お話ししたいことがあって」
「わかった。その前に、なにか食べたいんだが」
「それなら、キッチンへ行きましょう」
家政婦は通いだから、もう屋敷にいない。
悠真とキッチンに行き、卵を使った雑炊を手早く作った。
「温かいうちにどうぞ」
キッチンには小さなテーブルと椅子も置かれている。
普段は配膳台に使っているようだが、ふたりが向き合って座るにはちょうどいい。
よほどお腹がすいていたのか、まどかが茶の準備をしているうちに食べ終えている。
「うまかった。それで、話とは」
テーブルにまどかが湯飲みを置くと、悠真が尋ねてきた。
「真大さんのことです」
看護記録だけではわからないことを、言葉にして伝えるのは難しい。
悠真は黙ってまどかの話を聞いてくれた。
「そうか」
そのひと言だけ口にすると、悠真は黙ってしまった。
まどかの報告から、真大の症状をずっと考えているように見える。
茶をゆっくり飲んでから、悠真がポツポツと兄との関係を話してくれた。
年が離れていて、あまり遊んだ記憶がないこと。それでもたまに会うと優しかったこと。
幼い頃から、悠真にとって真大は完璧な存在だったようだ。
「俺も、会ってみるよ」
東京に帰ってから忙しくて、ゆっくり話していなかったことを後悔しているのだろう。
明朝、診察だと悟られないように真大を見舞うという。
「お願いします」
「話してくれてよかった」