諦めていた恋の続きを始めます
その日から、まどかは静かに真大に話しかけるようになった。
無理強いはしたくないが、気分がよさそうな時に声をかけてみる。
聞いてくれそうな気配があれば、島での出来事などを少しずつ話した。
やはり医者だけあって、最先端ではない場所での医療には興味がわいたようだ。
「へえ」「それで」と言って、時にはまどかに話を続けるように促してくる。
そんな時間が増えていくにつれ、次第に真大の瞳に力が戻ってきたように思えた。
「いろんな診療があるんだな」
大学や病院といった世界しか知らなかった真大には、島での医療を体験したまどかの話は新鮮だったようだ。
なにしろ都会と違って設備も限られているし、緊急時などは医師の判断だけが頼りだ。
悠真と船で救急患者を運んだ話には、とても驚いていた。
「そうか。ドクターヘリじゃなくて、船か」
「そうなんです」
「穴吹先生に、一度お目にかかってみたいね」
そうまで言ってくれると、まどかはうれしくなってくる。
「ご高齢ですが、とても素晴らしいドクターです」
たったひとりで、幼い子から臨終が近い高齢者まで診てきた医師だ。
穴吹の幅広い知識と経験が、すべてを物語っている。
「いつかぜひ、案内してほしい」
「はい」
そのあと診療船の話をしたら「そこで悠真と再会したんだ」とからかわれてしまった。
どうやら周防家では、船がふたりのキューピットだと思われているらしい。