諦めていた恋の続きを始めます
「僕も悠真とゆっくり話せたんだ」
お互いにいい時間を過ごせてよかったと、穏やかに微笑んでいる。
「今日は疲れたでしょう」
「いえ。うるさくありませんでしたか?」
屋敷のざわつきが気に障ったのではと思ったが、真大は首を横に振る。
「昼寝してたから、今になって目が冴えて困っているんだ」
「よく眠れるように、今夜はお薬を飲まれますか?」
眠りの浅い真大のために、ごく軽い睡眠導入剤が処方されている。
「ありがとう。今日は飲んでおこうか」
「わかりました」
まどかはキッチンへ行って、薬と水を準備した。
真大の寝室に戻って差し出すと、受け取りながら「遅くなったけど、婚約おめでとう」と言ってくれた。
あらためて言われると、なんだか面はゆい。
「ありがとうございます」
真大はしっかりとした声で祝福してくれた。もう以前の鬱々とした表情はみじんもない。
「そろそろ仕事に復帰しようと思ってる。悠真の奥さんになる人に、もう甘えられないからね」
そんな冗談まで口にする。
「甘えるだなんて。私は看護師ですよ」
「君も自分のことに専念しないと。準備が色々あるだろう」
悠真との結婚準備のことかと思うと、頬が熱くなってくる。
「僕のことはもう心配しないでいいよ」
「無理なさらないでくださいね」
「ああ。これからは気をつける」
体力が落ちているからすぐには長時間の心臓手術を執刀することは出来ないかもしれないが、医者の仕事へ戻る意欲が感じられた。
「じゃあ、また明日。おやすみ」
まどかは真大に、やっと平穏が訪れた気がした。