諦めていた恋の続きを始めます


真大の部屋からそっと出て、まどかは二階の悠真の部屋に向かった。
以前に部屋の掃除を頼まれたことはあったが、自分から足を向けたことはない。

でも、今夜は違う。
ふたりにとって、これまでとは別の意味がある夜にしたかった。

悠真に会いたい気持ちが、ますます胸の鼓動を早くする。

なんて言おうか、自分の気持ちをどう伝えようか、考えがまとまらない。
あれこれ思いながら、音を立てないよう静かに二階に上がりかけた。

その時、大きくバタンとドアが閉じられる音がした。

二階にいるのは悠真だけのはずだ。

まどかは悠真が降りてくるのかと思い、踊り場で足を止めた。
だがそこに姿を見せたのは、デコルテがむき出しになったナイトウエア姿の沙織だった。

少し髪が乱れている。
どうしたのかと思っていたら、沙織はまどかの目の前で足を止めた。

「静かにして」

ささやくような声だが、命令口調だ。

「は、はい」
「悠真の部屋に行くつもりなのね」

ずいっと近寄って来たので、まどかの背中は踊り場の壁にあたった。

「ええ」

まどかが答えると、沙織は嫌そうに眉をしかめる。

「今見たことは、誰にも言わないで」

「え?」

沙織が二階にいたことだろうか。
意味がわからなかったが、沙織はその美しい唇を閉じることはなかった。

「悠真が私に、部屋に来てほしいって言ったの」

そう言って、目元にはらりと落ちてきた髪をかき上げる。

「私の方が先に悠真の子を授かったら、ごめんなさいね」

呆気に取られているまどかを見て、沙織はクスッと笑った。

「ど、どういう意味ですか」

余裕がある沙織に比べて、まどかは動悸が早くなっていくのを感じていた。

「あなたと悠真が婚約したのは、私との関係をごまかすためだったの」



< 162 / 173 >

この作品をシェア

pagetop