諦めていた恋の続きを始めます


***



波の音が聞こえる。
荒々しい音ではなく、静かに渚に打ち寄せる軽い音だ。

まどかは以前、悠真と来たことがある海辺のカフェにいた。

朝に東京を発って、新幹線からローカル線に乗り継いだ。
無意識のうちに、悠真との思い出がある砂浜を行先に選んでいたようだ。

急ぐ旅ではないので路線バスに乗ったら、ずいぶん時間がかかってしまった。

もうお昼を過ぎている。
朝から何も口にしていなかったので、さすがに喉の渇きを覚えた。
喉だけではなく、体から心までがカサカサになっている気がする。

この時間に客の姿はないから、季節的に閑散期なのだろう。

砂浜が見える席に座ってメニューを見ると、ココアの文字が飛び込んできた。

「ココアをお願いします」

まどかに必要なのは、きっと甘くて暖かいもののはずだ。

(逃げたんじゃない。考える時間が欲しかっただけ)

悠真を信じようと思うたびに、昨夜の沙織の姿が蘇ってまどかを苦しめる。

(きっと何もない。何もなかったはず)

まどかは思い切って、海辺を歩くことにした。

料金を払って、店を出る。









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