諦めていた恋の続きを始めます
「すまない。君を追いつめてしまって」
「いいえ。私がひとりで悩んでいただけ。あなたを問いただす勇気がなくて」
まどかが少し震えたからか、悠真が自分のコートの中にすっぽりとまどかを包み込んでくれた。
「寒くないか」
「大丈夫」
グッと抱き寄せられたから、悠真の体の温かさが伝わってくる。
「沙織のことは、真大のために大ごとにしたくなかったんだ」
パーティーのあと、兄弟で話し込んでしまったそうだ。
夫婦がうまくいっているのか尋ねてみたら、真大なりに沙織のことを考えていたそうだ。
真大と沙織は、親の言いなりになって育ってきた者同士だ。
初めて会ったとき、同じ匂いがしたらしい。
「同じ匂い?」
「ああ」
親に認められたくて、ほめられたらうれしくて、がんばり続けた。
そのうちに視野が狭くなって、親の偏った価値観に縛られてしまった。
だから人生が思っていたのと違う方向に進むことが何より怖い。
その恐れを誤魔化すために、沙織は暴走してしまった。真大はそんな沙織を見捨てられないと言ったそうだ。
「それが真大なりの愛情なんだろう」
「そうだったんですか」
「真大にも、これまでのことを正直に話したよ。沙織と付き合ったこともなければ、恋人なんてとんでもない」
真大は悠真の話を「はっきり否定しなったお前が悪い」と言って、笑い飛ばしてくれたようだ。
それから自分の部屋に戻ったら、沙織がベッドにいたから驚いたと言う。
「せっかく兄といい話をしたところだったのに、ぶち壊すようなことをするから、頭に血が上って部屋から叩き出したんだ」
それで大きなドアの音がしたり、沙織の髪や着ているものが乱れていたのかと納得できた。
「これが昨夜の真実だ」
まどかは悠真から見つめられているのを感じた。
「信じて欲しい」
悠真はじっとまどかの返事を待っている。
「信じたい。あなたが好きだから」