諦めていた恋の続きを始めます
最初は不便に感じていた島での暮らしにも、二度目の春を迎えた今ではすっかり慣れた。
島に小さなスーパーはあるが、コンビニはない。ATMも一箇所のみ。
島に立ち寄るフェリーは四国とだけで、一日に数回しかない。
本州に行くためには船を乗り継ぐか、四国の大きな街まで出て、列車かバスに乗らなくてはいけない。
緊急時なら海上タクシーやチャーター船を利用する手もあるが、少々料金がかかる。
でも島の人たちは自家用車ならぬ自家用プレジャーボートを持っていたり、漁業関係者なら漁船を所有したりしているから特に不自由はないようだ。
島の春は穏やかだ。
まどかは島に来てから、春霞という現象を初めて見た。
海水は冬の温度が残っているのに、大気は急に暖かくなってくる。その寒暖差で生まれるのが春霞だ。
遠くの島々が淡いベールに包まれているような不思議な情景は、神秘的ですらある。
よく晴れた日には、島のあちこちで咲き始めた桜やツツジのピンクと、菜の花の黄色とのコントラストが美しい。
ゆったりした気持ちでのどかな景色を見るたびに、東京を離れてよかったとまどかは思っている。