諦めていた恋の続きを始めます
初めて感じた相手を思いやる気持ちが何なのか、まどかにはわからなかった。
兄の親友だし、好きか嫌いかと聞かれたら、好きとしか答えられない。
どこが好きかと聞かれても言葉にはできないし、あこがれなのか恋なのかもわからない。
ぞんな漠然とした感情だから、誰にも悟られないように気をつけた。
まどかは自分の立場も、よくわかっていた。周防から見れば、平凡な自分は単なる「親友の妹」でしかない。
進級して医学部のキャンパスが都心に移ってからも、周防だけはよく遊びにやってきた。
時おりまどかに話しかけてくれても、気を使ってくれているとしか思えなかった。
「元気?」
「はい」
そんなあいさつ程度でも、飛び上がるほどうれしくなる。
「進路は決めた?」
「看護学部を目指そうと思って」
「看護師か。まどかにはピッタリだな」
兄と同じように「まどか」と名を呼ばれただけでドキッとした。
まどかが受験勉強に行き詰っているときに、まるで家庭教師のように教えてくれたのも周防だった。
「いつも夕食をごちそうになっているから、そのお礼」
そんな単純な理由で、教えてくれる。
笑顔を見せることはあまりないが、教え方はとても丁寧でわかりやすかった。
ふたり並んで勉強しているとき、横を向いたら顔があまりにも近かったことがあった。
目の前にある切れ長のまなざし。高い鼻筋と形のいい唇。まどかはつい、見とれてしまった。