諦めていた恋の続きを始めます
「あいつは冷たいからな」と琉輝が言ったときは、どんな顔をすればいいか困った。
告白してくる女性がいても、スパッと断っているらしい。
「きっと理想が高いんだ。恋人にするのはかなりの美女だろうな」と話すのを、笑って聞き流すのがやっとだった。
兄の言葉を信じていいのか、誇張されているのか判断できない。
でもクールなまなざしを思い出すと、あの顔で断られた人たちが気の毒に思えた。
(告白しなくてよかった)
何度そう思ったことか。
とうとう琉輝が「周防に恋人ができた」と夕食の席で話し出した。
まどかは思わず箸を持つ手が止まってしまった。
相手は医学部で一番の美人で、学内でも評判になっているらしい。
「ふたりが並ぶと、ドラマみたいだよ」
「さすが、周防君が選ぶだけあるね」
「すてきねえ」
家族そろって食事していたから、父や母も美女と聞いて納得の表情を見せた。
「俺の趣味じゃないが」
「琉輝ったら、負け惜しみじゃないの」
家族が楽しそうに話すのを聞きながら、まどかは想いを隠していて正解だったと胸をなでおろす。
やはり悠真の恋人にふさわしいのは、綺麗で優秀な人だったなと思うと諦めもつく。
(でも好きになった気持ちにうそはないし、周防さんに恋してよかった)
その頃には恋とも呼べない淡い気持ちは、シャボン玉のようにどこかへ飛んで行ってしまった。
まどかはそう思っていた。
やがて高校を卒業したまどかは、希望していた大学に進んだ。