諦めていた恋の続きを始めます
だから和也から「僕のためなら、仕事辞めてくれる?」と言われたときには、すぐに返事が出来なかった。
和也は経営の勉強をするため、そろそろ父親の会社に戻らなくてはいけないらしい。
「それって……」
「まどかと結婚したいってことだけど」
思いがけないプロポーズだった。
交際してから数年経っているから「もしかしたら」と思わなかったかといえばうそになる。
ただ仕事か結婚か、どちらかを選ぶように言われるとは考えてもいなかった。
「急にどうしたの?」
「周防先生のうわさを聞いたせいかなあ。急に君とのことをはっきり決めたくなったんだ」
「周防先生が、どうかした?」
和也は「知らないのか」と言って、驚くような情報を教えてくれた。
医学部時代に周防と付き合っていた女性が、彼の兄と結婚したというのだ。
「お兄さんがアメリカから帰ってきて、すぐに結婚が決まったらしい。あの周防先生を振る女性がいるなんて信じられないよ。
周防先生より魅力的だとしたら、お兄さんってどんな人なんだろうね」
いつになく和也は饒舌だった。
それくらい院内でも話題になるくらい、大きなニュースなのだろう。
琉輝から、周防は幼い頃から兄と比較されていたと聞いていた。
その兄に恋人を奪われたなんて、周防はどれほど傷ついただろう。
周防の恋人だった人は、近ごろでは美人皮膚科医として注目を集めているらしい。
まどかは名前も顔も知らなかったが、周防の恋愛は順調だと思い込んでいただけに言葉が出てこなかった。