諦めていた恋の続きを始めます


(どうして……)

誰がそんなことを言っているのか、知るのが怖かった。

病院で周防の視線を感じたこともあったが、声をかけられたらどうしようかと思って避けてしまった。
周防にだけは、慰められたくなかった。

(こんな時に話しかけられたら、泣いてしまうかもしれない)

仲のいいスタッフはうわさなんてすぐに収まるよと気遣ってくれたが、ゆとりのない日々を送るうちにまどかの顔から笑顔が消えていた。
患者を前にしても、表情が動かない。微笑もうとしても、頬はこわばったままだ。

(どうして笑えないの)

琉輝にそれとなく聞いてみたら、ストレスが原因で余裕がない状態だと言われた。
心の防衛本能が、感情の動きを抑えているようだ。

「無理に笑うな」と言われても、仕事上ではそうもいかない。

ただでさえ「かわいげのないキツイ性格」といううわさがあるのだから、なんとかしたかった。
でも笑うエネルギーは、もうまどかに残ってはいなかった。

まどかがそんな状態なのに、和也と葉子は幸せの絶頂にいるようだった。

葉子は略奪したイメージを和らげようとしたのか、まどかが式に来てくれると触れまわっていた。
まどかがあっさりと別れを受け入れたからか、和也と葉子の連名で堂々と結婚式の招待状が送られてきたくらいだ。
どうやらお腹が目立たないうちに式を挙げるつもりらしい。


(もう限界)



< 35 / 173 >

この作品をシェア

pagetop