諦めていた恋の続きを始めます
まどかは病院に辞表を出した。
無理に笑おうとするより、何もしない時間を作る方が簡単に思えた。
(どこか、景色のきれいなところでのんびりしよう)
就職してからずっと仕事に追われていて、のんびりしたことはなかった。
まどかはしばらく東京から離れることを決めた。
(ひとりになりたい)
両親や琉輝も、賛成してくれた。
借りていた部屋をきれいに片づけ、荷物は実家に贈った。
それから旅に出る準備をした。
準備といっても、着替えくらいだ。旅のコースは決めず、気の向くままにあちこち訪ねるつもりだ。
***
明日から旅に出るという日、まどかは東京駅近くのホテルに泊まることにした。
朝一番の新幹線に乗るにはちょうどいい。
少々値段は高かったが、自分のためのちょっとした贅沢だ。
チェックインして、のんびりお風呂に入った。
髪も洗ってブローして、少し濃いめの化粧をする。身に着けるのはしわにならない、ジャージー素材のワンピースだ。
それからバーに足を向けた。
案内されてラウンジバーのカウンター席に座ると、目の前にはずらりとお酒の瓶が並んでいる。
遠くにはビルの夜景がきらめいて、これまでの生活とは別世界だ。
和也の思い出とさよならするために、ひとりでお酒を飲むくらい許されるだろう。
まどかはあまりお酒が強くないから、軽いおつまみ程度と一緒にキールを飲んだだけでいい気分になってきた。
二杯目には色のきれいなカクテルを選び、のんびりと味わった。
「大丈夫か?」
「えっ!」
もの思いにふけっていたところに、急に声をかけられた。
声を上げるくらい驚いて振り向くと、そこには背の高い男性が立っていた。
「周防さん」