諦めていた恋の続きを始めます
同じ病院にいても滅多に会うことがなかった周防が、ここにいる。
「学会? でしたっけ?」
整った顔立ちがすぐ近くにあって、まどかは驚いた。
挨拶しようと立ち上がりかけたが、手で制された。
周防はサッと横のスツールに座ったから、すぐそばに美麗な顔がある。
「偶然ですね」
「琉輝に聞いた」
「え?」
明日から旅行に出ることと、今夜はこのホテルに泊まることは前もって家族に知らせていた。
深酒をしないように見張り役をよこしたのだろう。
「兄さんたら」
バーテンダーに手をあげて、呼んでいる。その手はしなやかで、長い指が美しい。
パッと見ると細身なのに、まどかは彼が普段から体を鍛えていることを知っている。
彼は「医者には知性と気力と体力が必要だ」と言ってはばからない人だ。
ズキンと胸の奥に甘い痛みが走る。
隣にいるのは、まどかが秘かにあこがれていた人だ。
頭がよくて、かっこよくて、高校生だったまどかには手の届かない人だった。だから想いを告げることはできなかった。
初恋は実らないというが、告白もしていないのだから恋とも呼べないだろう。
今は優しげな表情をしているが、まどかは彼にちょっぴり意地悪な面があるのも知っている。
もしかしたら「こんなところでやけ酒か」と言われるかなと身構えた。