諦めていた恋の続きを始めます


「だいぶ飲んでるのか?」

「いいえ、おいしくお酒をいただいているだけですよ」

つい強がって、グラスを掲げて見せる。

「そうか。やけになってるんじゃないんだな」

そう言いながら、近づいてきたバーテンダーにウイスキーをロックで注文している。

「やけになんて」

「強がるなよ。俺の前では」

その言葉で、まどか和也から聞いていた話を思い出した。

(そういえば学生時代の恋人が結婚したんだった。それも周防さんのお兄さんと)

まどかは会ったことがないが、付き合っていた人はかなりの美人らしい。
医学部時代から人気の的で、お似合いだと聞いていた。
だがその人は、なぜか彼の兄と結婚してしまった。

兄弟の間で、何があったのだろう。さすがに周防も傷ついたはずだ。
まどかは詳しい経緯は知らないが、周防の前で自分だけが被害者ぶってはいけない気がした。

「そうでしたね。ごめんなさい」

まどかが元恋人のことを気にしているとわかったのだろう。

「いや、俺のことは気にしないでいい」

そう言って自嘲気味に笑う口元は、少し歪んでいた。





< 38 / 173 >

この作品をシェア

pagetop