諦めていた恋の続きを始めます
「だいぶ飲んでるのか?」
「いいえ、おいしくお酒をいただいているだけですよ」
つい強がって、グラスを掲げて見せる。
「そうか。やけになってるんじゃないんだな」
そう言いながら、近づいてきたバーテンダーにウイスキーをロックで注文している。
「やけになんて」
「強がるなよ。俺の前では」
その言葉で、まどか和也から聞いていた話を思い出した。
(そういえば学生時代の恋人が結婚したんだった。それも周防さんのお兄さんと)
まどかは会ったことがないが、付き合っていた人はかなりの美人らしい。
医学部時代から人気の的で、お似合いだと聞いていた。
だがその人は、なぜか彼の兄と結婚してしまった。
兄弟の間で、何があったのだろう。さすがに周防も傷ついたはずだ。
まどかは詳しい経緯は知らないが、周防の前で自分だけが被害者ぶってはいけない気がした。
「そうでしたね。ごめんなさい」
まどかが元恋人のことを気にしているとわかったのだろう。
「いや、俺のことは気にしないでいい」
そう言って自嘲気味に笑う口元は、少し歪んでいた。