諦めていた恋の続きを始めます
心配してくれているとわかる深い声が、まどかの心に火をつけた。
せっかく明るい気持ちになれたのに、今夜ひとりきりでベッドに入るのは嫌だ。そう思うと、隣にいる人が手放せない気がした。
思わず近くにあった腕に手を乗せていた。
「一緒にいてくれますか?」
まどかの精いっぱいの誘いを受けてくれるだろうか。
不安で揺れる心を隠すように、うつむいてしまった。
「行こう」
その声に顔をあげると、端正な表情は真剣そのものだ。
周防が先にまどかの手を取って、立ち上がる。
まどかの手は彼の左腕に回されてしまった。まるで仲睦まじく腕を組んだカップルのようだ。
バーラウンジを歩くときも、エレベーターに乗る時も、そのままだ。
「何階?」
まどかはカードキーをタッチして、部屋の階のボタンを押した。
周防はエレベーターを降りてからもまどかに寄り添ってくれている。
その温かさをきっと忘れない。そんな、不思議な予感がしていた。
(でも、今夜だけ。同じ経験をしたもの同志、慰めあうだけ)
体中にお酒が回っていても、これからしようとしていることを頭ではしっかりと考えている。
(周防さんだって、これは一夜のことだってわかっているはず)
大人の男と女がお互いに同意していることに、愛とか恋とか無理に理由をつけなくてもいい。
今この瞬間は、ふたりで過ごしたいと思っているのだから。
その夜、ふたりは結ばれた。
『俺にしておけ』
熱い抱擁の中で、そんな言葉が聞こえた気がした。
(これは、夢)
周防が自分を選ぶわけがない。
酔いが見せてくれる幸せな夢だと思って、まどかは溺れることした。
激しく、感情のままに、ただ欲にまかせて。