諦めていた恋の続きを始めます
ふたりの距離



爽やかな季節になった。
空の色を映したかのように、海の色も青さを増している。

まどかが住んでいる島も、ゴールデンウイークにはいつもより観光客や帰省してくる人で賑わっていた。
だが過ぎてしまえば、日曜日でも静かなものだ。

休診日には、まどかは家の掃除や洗濯をする。
そのあと港の近くにある島で一軒だけの小さなスーパーに行き、買い物をする。
それだけで終わってしまうくらいの、単調な一日だ。

一週間分の食料を買い込んで店を出たら、ふいに後ろから名前を呼ばれた。

「まどか」

名前で呼びかけるのは、家族と、別れた婚約者と、あとひとりだけ。

振り向くと、ラフな服装の周防がいた。
ストライプのシャツにコットンパンツ姿だから、医師というより観光客にしか見えない。

「周防さん」

記憶から消してしまおうと努力していた人が、目の前にいる。

「どうして」
「他人行儀だな。悠真でいい」

「えっと、」

いきなり名前で呼べと言われても、初めて口に出すのだから舌がもつれてしまった。

「あ、あの、ゆ、悠真さん。どうして、島に?」

「この前は仕事だったから」

悠真の返事も、どういう意味かわからなかった。 

「島で釣りでもされるんですか?」

ただ向き合っていても間が持たなくて、まどかは的外れなことを口にした。

「は?」

島には釣りスポットが何か所かあるので、県外からの海釣り客がよく訪れる。
だが悠真は手ぶらで、何の道具も持っていない。

「まどかに会いに来たんだ」

「え?」

まどかは聞き違いかと思った。先日診療船で再会したばかりなのに、今日は会いに来たと言う。

「私に?」




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