諦めていた恋の続きを始めます
当たり障りのない会話ばかりが続く。
悠真は年明けから、四国の玄関口ともいわれる街にある病院で働いているそうだ。
その病院は、診療船の管理や運行事業に関わっているらしい。
「まさか、まどかに会うとは思わなかったよ」
「そうですね」
それ以上は、なかなか話題が広がらない。
あっという間に食べ終わったから、まどかは食後のコーヒーを勧めてみた。
「コーヒーはブラックでいいですか」
たしか大石家に遊びに来たときは、砂糖もミルクも入れていなかったはずだ。
「よく覚えていたな」
悠真は少し驚いていたが、好きだった人のことだから記憶に残っていたとは言えない。
再びキッチンに立ってコーヒーを入れ始めたら、悠真の低い声が聞こえてきた。
「ずっと島にいたのか?」
「え?」
怒っているような、少し冷たい声だ。さっき島の人たちと会話していた人当たりのいい話し方ではない。
「旅に出るとは聞いてたが、すぐに帰ってくると思っていた」
そういえば、お酒を飲みながら旅の話をしたのは覚えている。
あの時は気の向くままに旅をして、落ち着いたら東京に帰るつもりだった。
ただ、この島と出会ってしまっただけだ。
自信を失い、疲れ果てていたまどかには、島の美しい風景や人情あふれる人たちとの出会いはかけがいのないものだった。
それに気候は温暖だし、おいしい食べ物もありがたい。
生まれて初めて見た満天の星。季節ごとに変化する海の色。日の出も日没の時間も、格別だ。
それに穴吹のもとでの診療所の仕事もやりがいがあった。
そんな島の魅力をいくら話しても、悠真は無表情だった。
「連絡くらい寄こせただろう」
まどかはあえて悠真には連絡をしなかったのだが、どうやらそれが気に入らなかったようだ。
「目が覚めたらお前がいなくて、俺がどんな気分だったかわかるか」
「え?」
酔った勢いですがった相手と、翌朝しらふで顔を合わせるくらい気まずいものはない。
そう考えて何も言わずに立ち去ったのだが、悠真がどんな気持ちでいたかなんて考えてもみなかった。