諦めていた恋の続きを始めます
「まどかがそれでいいのなら」
そのままなにも言わずに、ただまどかを見下ろしてくる。
思いがけない近距離で悠真を見つめ返してしまったが、その瞳からはなんの感情も読み取れない。
妊娠していなくてホッとしているのか、まどかの態度にあきれているか、それとも戸惑っているのかわからない。
どれくらいじっと見つめあっていただろう。気がすんだのか、先に悠真の方が目をそらせた。
「水が欲しい」
悠真はガラスのコップを掴むと、冷蔵庫からミネラルウオーターを注いだ。
冷たい水を入れたコップを手に持ったまま、何も言わずに悠真は座敷に戻っていった。
まどかは悠真との距離を意識しすぎてしまったのが恥ずかしかった。
キスまで想像してしまうなんて、あさましいことだ。
動揺を悟られたくなくて、深呼吸をしてからコーヒーをカップに注いだ。
まどかが座卓にコーヒーカップを置くと、悠真がのんびりとつぶやいた。
「ここは、いいところだな」
さっきまでのピリピリした雰囲気はもう消えている。
「はい。慣れたらとても住みやすいです」
島での午後のひととき。ふたりでコーヒーを飲みながらのんびりと過ごす。
まさか悠真とこんな時間を過ごせるとは思ってもいなかった。
妊娠という言葉の緊張感は、もうふたりからは消えていた。