諦めていた恋の続きを始めます
コーヒーを飲み終えた悠真は、明日も仕事だから帰ると言う。
港までまどかも見送ることにした。
また坂道だ。今度は下りながら、ふたりで歩く。ただ黙って、ふれあいそうになりながら狭い道をゆっくり進む。
港に着くまで、ふたりの間に言葉はなかった。
「お気をつけて」
それしかまどかは言えなかった。「また」とか、「次はいつ」なんて言えるわけがない。
船に乗り込む悠真は、軽く手を上げただけだった。
フェリーはこの島と、悠真が働いている病院のある四国では比較的大きな街の港とを行き来している。
(東京から離れるなんて、なにかあったのかな)
もう船は見えなくなったが、まどかの心はざわざわと落ち着かない。
(私が心配することではなさそうだけど)
仲のいい友人でも、ましてや恋人でもないのに気にかけるなんておこがましい。
もう二度と会うことはないと思っていたのに、再び出会ってしまった。
それが東京から数百キロも離れた場所だとは、皮肉なものだ。
まどかは悠真との再会を素直に喜ぶべきなのか、どう考えても答えは出なかった。