諦めていた恋の続きを始めます


浜辺の近くのカフェに入って、窓際のカウンター席に並んで座った。
この店からは、砂浜全体の景色がよく見渡せる。

ふたりでぼんやりと海を眺めながらアイスコーヒーを飲むひとときが、たまらなく愛おしく感じられた。

「やっと昔の表情に戻ったな」
「え?」

「肩の力が抜けて、まどからしい笑顔になっている」

「私、笑えてました?」

「笑えているか」という、おかしな問いかけになってしまったが、悠真は気にならないようだ。

「ああ。楽しそうだったよ」

笑っていた瞬間を思い出したかのように、愉快そうな顔をする。

自然に笑えていたと聞くと、目の奥がじんわりとうるんできた。
ここで泣くわけにはいかないとぐっとこらえたが、じわじわとうれしさが込み上げてくる。

泣くまいと、ぐっと眉間に力を入れる。

「あれ、怖い顔になったぞ」

「いやだ」

悠真がまどかの表情を再現しようとしたのか、眉を寄せている。
わざとしかめっ面を見せつけるから、吹き出してしまった。
まどかの笑い顔を見て、悠真も声を立てて笑う。

(楽しい)

ふたりで交わす言葉に心がはずむ。
久しぶりに穏やかな時間を過ごしたら、心がふんわりと温かくなってきた。

勘違いしてはいけないと思いつつ、悠真にとってまどかは何なのだろうかと考えてしまう。
何度も会って、笑いあって、ふたりの距離はどんどん近くなってきた。

(だめ。都合よく考えちゃだめ)
 
たまたま兄の友人と再会しただけ。
知人の少ない場所で生活しているから、時間つぶしにちょうどいい相手なだけ。
なんとなく島を気に入ったから、遊びに来ているだけ。

まどかは自分に言い聞かせるように、頭の中で繰り返した。




< 55 / 173 >

この作品をシェア

pagetop