諦めていた恋の続きを始めます
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朝晩はひんやりと心地よい風が吹く季節になった。
さわやかな秋空には、白い雲が浮かんでいる。空と同じ青さの海に、かすかに波が立っている。
あちこちでコスモスが風に揺れている土曜日のお昼過ぎ、穴吹とまどかは、のんびり坂道を歩いていた。
「気持ちのいい季節になりましたね」
近所に往診に行った帰り道だ。
「年末で診療所を閉院するって、島の皆さんにもほぼ伝わりましたね」
「ああ。年末までって区切って正解だった。次のことを考えられるからね」
「四国の病院から医師を派遣してもらえたらいいですね」
「周防先生にも協力してもらっているから、そろそろ返事が来るだろう」
そんなおしゃべりをしながら狭い路地を曲がったとたん、まどかは男性と出くわした。
「キャッ」
勢いでぶつかりそうになったが、その男性の腕がスッと伸びてきて受け止めてくれた。
「やあ」
「悠真さん?」
少し髪が乱れているから、急いでいたのだろうか。
「行き違いにならなくてよかった」
診療所には往診中の札を出しておいたから、探してくれていたようだ。
「穴吹先生、お疲れさまです」
穴吹と悠真は役場にある情報通信機器を使っての遠隔診療で、何度か顔を合わせている。
島の患者の治療を相談しているうち、すっかり打ち解けていた。
「ちょうど今日の診察が終わったところなんだ。よかったら、うちにいらっしゃい」
昼食はまだだろうからと穴吹に誘われるまま、まどかと悠真はおじゃますることになった。
穴吹家は診療所にほど近い場所にある、石造りの塀に囲まれた屋敷だ。
庭にはオリーブやミカンの木が雑多に植えてあって、まるで果樹園のようだ。