諦めていた恋の続きを始めます
「気にしないでくれ。お客さんなんだろう。でも島にはゆっくり話せる場所がないねえ」
そう言って穴吹は首をかしげたが、何かひらめいたのかパッと明るい顔になる。
「まどか君、待合室を貸してあげなさい。あそこなら静かだろう」
「は、はい」
さっき戸締りしたばかりだから、診療所の鍵はまどかが持っている。
「ありがとうございます」
悠真は丁寧に穴吹に礼を言った。
「では、こちらです」
まどかはふたりを案内するために歩き出した。
特に話しかけることもないし、名乗る必要もないだろうから黙ったままだ。
「どうぞ」
診療所に着いて、ドアを開けた。
あらためて女性を見ると、よく手入れされた髪や肌は輝くようだし、あか抜けたファッションはまぶしいくらいだ。
動きやすさと清潔さしか考えていないまどかとは、同じ女性として雲泥の差がありそうだ。
(あれ)
ふと女性を見ると、悠真に向けるのとは違う能面のような表情でまどかを見ている。
(どうして?)
女性と会った記憶はない。それなのに、まどかの顔から目を離さない。
まどかの胸に、なんとも言えない不安が湧いてきた。