諦めていた恋の続きを始めます


「おい」

悠真が鋭くとがめるが、沙織は平気な顔をしている。

まどかと和也とのいきさつは、どこまで広がっているのだろう。
和也の実家は医療機器を販売しているから、医者仲間でもうわさになっていたのかもしれない。
沙織が知っているのも不思議ではないが、まさか初対面の人から「捨てられた人」と言われるとは思ってもいなかった。

「言葉を慎め!」
「あら、ごめんなさい。でも本当のことでしょ」

悠真の声の厳しさにまどかでも緊張したが、沙織はまったく気にならないようだ。
その遠慮のなさと悪びれない様子を見て、まどかはあぜんとするばかりだ。

「思っていたとおりの方ね」

そう言って、じろじろ全身を見てくる。
琉輝とは似ていない、地味な顔立ちが珍しいのだろうか。

「悠真とふたりにしてくださらない」
 
どうやら沙織はまどかがこの場にいるのが気に入らないらしい。

ふたりは学生時代の気分のままなのか、名前で呼び合っていた。
悠真は単なる固有名詞として使っているようだが、沙織には少し媚びが含まれている。
かつて恋人関係だったにしては、お互いの感情はすれ違っている気がする。

「まどかがいてもいいだろう」
「でも……」

周防家の話だからと、沙織はまどかにとがめるような視線を向けてくる。
だが悠真は、兄嫁となった沙織とはふたりきりになりたくないようだ。





< 66 / 173 >

この作品をシェア

pagetop