諦めていた恋の続きを始めます
「まどかなら聞かれても構わない」
「でも」
「まどかなら大丈夫だ。いやなら帰ってくれ」
悠真がきっぱりと言い切ったので、しぶしぶ沙織が話し始めた。
「あのね、東京に帰ってきてほしいのよ」
「すぐに帰るつもりはない。面倒は避けたいからな」
「面倒ってなに? ひどいわ」
「覚悟していたんだろう。仕事も、親との同居も」
「だって、あんなに大変だなんて。私は……」
「周防総合病院の院長夫人になりたいなら、今さら弱音を吐くなよ」
「ひどい言い方」
話し合いは平行線で、とてもまどかが聞いていい話だとは思えない。
だんだんまどかは、耳をふさぐか席を立ちたくなってきた。
「とにかく、帰ってきて。悠真だけが頼りなの」
「頼りにされても困る。まどかに誤解されたくないから、口を慎んでくれ」
「えっ⁉」
「わかるだろ。俺たち付き合ってるんだ」
沙織が信じられないという目つきでまどかを見る。
まどかも声を上げそうになった。「付き合ってる」という言葉を、悠真はどういう意味で使ったのだろう。
悠真を見ても、その表情からは何の感情も読み取れない。
「悠真が付き合う? こんな人と?」
沙織は信じられないのか、あきれたような視線を向けてくる。
「君には関係ないだろう」
悠真がそのまま黙り込んだので、待合室はシンとなった。
真っ先に沈黙に耐えられなくなったのは、沙織だった。
「……あのね、口止めされていたんだけど、真大さんが病気なのよ」
やっとここに来た事情を話す気になったようだ。
「真大が?」
「だから、あなたに助けてほしいのよ。お願い、周防の家に帰ってきて」