諦めていた恋の続きを始めます
だが悠真の答えは違っていた。
「無理だ。とにかく、今日のところはひとりで東京に帰ってくれ」
「そんな!」
こちらの病院での仕事もあるし、今すぐに動けるわけがないと悠真は言う。
「今後のことは、まどかと相談して決める。真大のことは、俺から父に連絡を入れて確認する」
悠真は長椅子から立ち上がると、まどかのそばにやって来た。
釣られてまどかもなんとなく立ち上がると、ぐっと抱き寄せられた。
まるで見せつけるようにピッタリと寄り添ったからか、沙織は眉をしかめた。
「フェリーに乗り遅れるなよ」
「ひとりで先に帰れだなんて、ひどいわ」
沙織は今にも泣きだしそうな顔でまどかをにらんでくる。
まるでまどかが悠真を引き留めている悪者のようだ。
ここで「恋人とかじゃありません」と口にしたら悠真が困る気がするし、どうすればいいのか見当もつかない。
悠真がひと言もしゃべらないからか、沙織は「帰るわ」と言って立ち上がった。
「あの、お気をつけて」
診療所から出て行く背中に声をかけたが、沙織が振り向くことはなかった。
沙織の姿が見えなくなっても、悠真はまどかを抱き寄せたままピクリとも動かなかった。