諦めていた恋の続きを始めます
こんなとき何を話せばいいのかと迷っていたら、悠真がとんでもないことを言いだした。
「ここでひと晩、寝てもいいかな」
こことは、診療所でという意味だろうか。
「ダメよ。ここに泊めるわけにはいきません」
この島には民宿くらいならあるが、釣りのシーズンに空きはないだろう。
「今日はのんびりしたいんだ」
せっかくの休日だから、ゆっくり過ごすつもりだったのにとぼやいている。
そろそろ夕刻だ。定期船もあと数便しかないというのに、悠真に帰るつもりはなさそうだ。
悠真は冷静にも見えるが、どうやら兄の病気を知って気持ちが乱れているようだ。
もし家族が病気だと聞かされたら、まどかだってつらい。
そう思うと、すぐに帰れとは言えなかった。
「とりあえず診療所から出ましょう」と声をかけたとき、入り口の前に自動車が急停止する音がした。
「大石さん!」
この島の漁業組合長の声がする。
大きな声で名前を呼ばれたので、まどかも慌てて診療所のドアを開けた。
すると漁業組合のロゴの入ったミニバンが、診療所の前の駐車スペースに停まっていた。
「組合長さん、どうされました?」
「種村のおばあさんの所へ行ったら、庭で苦しそうにしてたから連れてきたんだよ」
「えっ」