諦めていた恋の続きを始めます
悠真 ①
膝の上に頭を乗せたら、あっという間にまどかは眠ってしまった。
かすかに胸が上下しているから、もう深い眠りに落ちているだろう。
そっと抱き上げて、寝室のベッドに運ぶ。
「おやすみ」
そうつぶやいて、目にかかる前髪をそっと撫で上げた。
その唇に触れたい気持ちをグッと抑えた。
リビングのソファーに戻って、目を閉じる。
同じマンションに、まどかがいる。そう思うだけで、悠真の体は熱を持った。
今夜は自分の想いより、患者のことで疲れ果てているまどかをゆっくり休ませてやりたかった。
まどかと再会してから、数か月。
かつてのような屈託のないも笑顔に戻ることだけを願って、まどかを見守ってきた。
まどかを抱いた夜。まどかが姿を消した翌朝。すべて間違っていたのかと悔やんだ。
もう後悔だけはしたくない。
だから再開してからは、焦らずにゆっくりまどかとの関係を深めていこうと決めた。
だが運命は甘くない。また次の難題が悠真に立ちはだかってきた。
◇◇◇
悠真が生まれた周防家は、代々続く医師の家系だ。
父の真治は医者というより、ビジネスマンとしての才能があったようだ。
親から受け継いだ周防総合病院を大きくしようという野心家で、最新の機器を導入して名医を招き、病院の名をあげることだけに夢中になっていた。
母の栄子は旧家の生まれで、父にも病院に関心はなく、自分の趣味や社交に熱心な人だった。
男の子をふたり産んだら役目は終わったとばかり、家事も育児も投げ出して遊び暮らしていた。
父に財力があったおかげで家政婦を雇えたから、悠真は育ったようなものだ。
夫婦仲は冷え切っていたので、悠真は両親が並んでいる姿や会話しているのを見たことがない。
おそらく出かけた時だけ、夫婦らしくしているのだろう。