諦めていた恋の続きを始めます
まどかもいずれは東京に戻るつもりだから、閉院までならお互いにちょうどいい。
それに穴吹夫妻は、島に来たまどかのプライベートな事情を尋ねてはこなかった。
まどかも隠すつもりはなかったが、夫妻はとてもおおらかな性格のようだ。
「よろしく頼むよ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
まどかたちの話を聞いていた老女もニコニコしている。
「よかったね、先生。いつも看護師がいてくれたらって言ってから」
「種村さんのおかげだよ」
まどかもあらためて挨拶を交わした。
種村は、もう八十を過ぎているという。
夫を亡くして島でひとり暮らしをしているが、不整脈の持病があるし大動脈の手術歴もある。
血圧の管理が必要だから、定期的にここで診察を受けて薬で調整している。
息子の家族は大阪にいるから、穴吹医師だけが頼りなのだそうだ。
まどかが働くことが決まったその日のうちに、種村の紹介で診療所の近くに小さな家を借りた。
ライフラインは整っているし、前に住んでいた人の家具が残っていたので、ありがたく使わせてもらうことにした。
新しい住人が珍しいのか、看護師が島に来たことを喜んでくれているのか、周囲の人たちはなにくれとなく世話を焼いてくれる。
優しい言葉をかけてくれるし、島で採れる魚や野菜をいただくこともある。
偶然立ち寄っただけだったのに、居心地がいいうえに診療所が忙しくて、一年があっという間に過ぎていった。