諦めていた恋の続きを始めます
悠真や琉輝たちのグループは、研究でも遊びでも成績を競い合う。
男女関係なく集まって、忌憚のない意見を言う関係だ。いつの間にか互いに名前で呼び合うようになっていた。
中でも目立っていたのが、畑中沙織だ。
明るい性格と華やかな顔立ちは、医学部でも際立っていた。しかも父親が官僚で、医師会にも顔が利くという。
沙織は勉強だけでなく遊びにも積極的で、男子学生たちに、しょっちゅう声をかけていた。
悠真は興味すら抱いていなかったから、どんなに誘われても断っていた。
たまたま悠真が遅くまで研究室に残っていた日、沙織がストーカーまがいの嫌がらせを受けている場面に遭遇してしまった。
しつこく交際を申し込まれているようだったから、無視することも出来なくて声をかけてしまった。
「彼女、嫌がっているじゃないですか」
悠真を見た沙織は天の助けとでも思ったのか、とんでもないことを言いだした。
「彼、私の恋人なんです。迎えに来てくれたの」
そう言って、沙織はいきなり悠真に抱きつく。
はっきり沙織が恋人宣言したものだから、相手は悪態をつきながらも去っていった。
その男が背を向けても、沙織は悠真の腕にしがみついて離れない。
男の姿が見えなくなってから沙織を引き離した。
「離れてくれ」
「あら。そんな怖い顔しないで」
気落ちしているかと思ったが、沙織はあっという間にいつもと同じ表情に戻っている。
こっちはたまたま助けただけなのに、自分に好意を持っているとでも思ったのだろうか。
「ストーカーに困っていたなら、大学か警察に相談すればいいいだろう」
「これからも医学部で顔を合わせる相手なのに、あまり大げさにしたくなかったの」
沙織にとって大切なのは、周囲からどう見られるかのようだ。