諦めていた恋の続きを始めます


悠真の心中は穏やかではいられなかったが、未練がましい振る舞いはしたくなかった。
横に立つのが自分でないのは残念だが、まどかには幸せになって欲しかった。

そんな時、偶然に沙織と出会った。
沙織は皮膚科が専門だ。勤務先も学会も違うから、顔を合わせるのは卒業以来だ。

「腐れ縁だし、軽く一杯付き合って」と誘われて、時間つぶし程度の気持ちで手近な店に入った。
沙織は人気の美容クリニックに勤めていた。テレビ番組にも出ているようで、肌にいい洗顔方法や乾燥の防ぎ方などを紹介すると視聴者から喜ばれるそうだ。
その効果があったのか、新たに化粧品分野に進出する薬品会社から声がかかったらしい。

「今度、美白効果のある化粧品のイメージキャラクターになるのよ」

実際に研究開発には加わらないが、広告塔になるのだろう。
それでも沙織は自慢げだ。自意識の高いところだけは、学生時代から変わっていないようだ。

そろそろ帰ろうかと思っていたら、沙織がいきなり突拍子もないことを言い出した。

「ねえ、私たち結婚しない?」

親からは見合いを勧められるし、独身でいるより結婚していたほうが仕事がやりやすいと言う。
沙織の父は上級官僚だし、母は旧家の出だ。だから自分は周防悠真の結婚相手としての条件はいいはずと笑っている。

「どうかしら」

だから自分と結婚しないかと、デパートで買い物するように軽い話しぶりだ。




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