諦めていた恋の続きを始めます
悠真②
兄の真大は三十半ばを過ぎているが、まだ独身だ。おそらく仕事一筋なのだろう。
カリフォルニアの病院で心臓外科医として働いていたが、ようやく帰国が決まったらしい。
これからは周防総合病院で働きつつ、院長職を継ぐ準備に入るという。
真大は難しい心臓手術をこなせるようで、真治は最新機器の導入を決めたと自慢げだった。
電話でそんな話を聞かされたせいか、悠真は長男の立場が少し気の毒になった。
気ままな弟の立場が申し訳ない気さえする。
大切な息子というより、真大も周防家にとって都合のいい駒でしかないのだろう。
長年にわたって両親の期待を背負ってきた真大は、息苦しくないのだろうか。
あまり話したことのない兄だが、医師としては尊敬しているし家族としての情はあった。
家族だけの食事だと思って悠真が指定されたレストランに行くと、なぜか沙織が同席していた。
「沙織さんと真大の婚約が決まったのよ」
栄子はうれしそうにしている。
周防家の嫁として、沙織の整った容姿や名門の血筋がなにより欲しいのだろう。
それに沙織の父は厚生労働省の上級官僚だから、融通を図ってもらいたいという真治の魂胆も見え隠れしている。
最近はあちこちの病院で経営が問題になって、再建のための合併や統廃合計画も進んでいると聞く。
もしかしたら真治の強引な経営で、周防総合病院にも影が差しているのかもしれない。
おそらく真大にというより、病院にとって沙織ほど条件のいい相手はいないのだ。